お袋が通って、世話をしてくれているとか?
『虐待されてた』と泣いていたのは、誰だっけ?
『虐待されてた』 と言いながら、親に甘えられる お前。
お前が言う『虐待されてた』は、
『思い通りにならず、悔しかった』程度の ことか?
暴言を吐かれたことはあっても、
殴られたりはせず、殺されかけたこともない お前。
姉(私)が虐待されるのを、どんな気持ちで 傍観してた?
残虐行為は 見せるだけでも、人の心を 蝕む。(傷つける)
まして 子どもが、そんなものを 毎日 見せられたら、
ダメージは はかりしれない。
…分かってるさ。(頭では)
喩えて云えば、
お前の傷は カスリ傷、
俺の傷は 貫通銃創。
どっちも、治っていない。
どっちも、死なずに済んだのに、
病み腐って、自分の生命を 愛せない。
お前ら(弟ども)!
暴言は 吐かれたかもしれないが、
俺が 味わった地獄とは、比較にならない程、ましな待遇だった(人間扱いされてた)ろうが!
逃げ遅れた俺を、よくも 親と同類扱いして(見下して)くれたな。
お前ら、自分さえ逃げおおせれば よかったのかよ!
暴言だけじゃなく 殴る蹴る、シカト(無視)、性の恐怖まで味わった俺。
グレる気力も なかった俺。
(シンナーも、万引きも、不純異性交遊すら やってねぇ)
『陰気で役立たず、将来は犯罪者になるタマだから、親の責任で 殺してやる』と 決めつけられた俺。
誰も助けてはくれないから、意味も分からず、
「ごめんなさいごめんなさい」
泣き叫んで 命乞いした、幼い日の俺。
お前らは、思わなかったか?
自分以外の 誰かが、暴言の標的になってる間は、
(ひといき つける)と…
情けないけど、俺は そう感じたことがあった。
お袋は、親父のことを、
『いけにえが必要な人』と 決めつけた上で、
離婚せずに しがみついていたのだから、
最初の子どもが【生き餌】になったのは、必然だった。
心を殺して 謝ったりせずに、幼いときに 殺されていれば、俺は 楽だったと思う。
あのとき、嘘の謝罪(命乞い)をして、何になった?
命は拾ったけど、心も頭も 狂ったままだ。
ある誘拐殺人事件の遺族(日本人じゃなかった)が、
『生きて 救い出されたとしても、彼女が立ち直れたとは思えない』と、書いていた。…
遺族としては、そうでも思わなきゃ、やりきれなかったのかもしれない。
(命が助かれば、彼女は 立ち直った筈だと、私は信じたいけど)
17歳まで 幸せに育って、
最期の数日間、地獄を味わい 殺される人生と、…
暴力づけで育って、自分を責め続け、
気を紛らわすために 道化を演じる(人に親切にする)人生、
『どちらか』選べと云われたら、
両方 お断わりだ。
(後者が 私の現実だけど、他の選択肢が選べず、そうせざるを得なかっただけ)
多分、17歳で逝った、優しく美しい娘さんは、
47年 虚しく生きた私より、周囲の人を 幸せな気持ちにしてきたと思う。
先日、断酒会の人に誘われた。
(本音を吐ける相手が、お互いに必要だった)
杖を携えて行った。
『いい女がいれば やりたい』と、電話でしきりに言った人の 真意は分からないが、
好みじゃない相手だから、そんな 身も蓋もないことを 言ったと思う。
言われた私も(セクハラなどと)、騒がない。
その手の言葉には、昔から 慣れている。
「この杖で チャンバラできる(渾身の力で ぶつかり合える 稽古の)相手を、募集しています」
『それは 無理だな』
「分かりませんよ、いたこともあるのだから」
『ははあ、だんだん分かってきたぞ、マイチャンのことが』
杖を持つと 私は、
飢えも、孤独も、不安も、苛立ちも、忘れてしまう。
樫(カシ)の杖には、…
私の心を 鎮める 何かがあり、
私の血を たぎらせる 何かもある。
気持ちの良い空間で、杖を かかえて眠れば、
(私の場合)人間のオスと ペアを組まなくても、
豊かな(満ち足りた)気持ちで、こみあげる笑いと共に、眠りにつける。
(問題は、快適な寝床を、用意させまいとする、
凄まじい怒りや、罪悪感、人間に対する恐怖が、心を占拠しているってこと)
杖は、敬愛する 師範がくれた、
かたみの杖の、かわりの杖だ。
(実物は、師範代だった人に 召し上げられたので、手元にない)
かたみの杖を、差し出すように言われたとき、
揉めるのが嫌だから「はい」と答えたけど、
心が 死んでいくような気がした。
師範が(認知症で)施設に入った途端、師範代は、
『杖を返せ』と 言ってきた。
道場に来ない(合氣道の稽古は、ずっと休んでた) 白帯ふぜいが、
師範と 杖で遊んでた…
師範代は、けしからぬと思ってたようだ。
『杖は 道場の物。道場に来ない者が 持っているべきでない』
だから『返せ』と言う 理屈。
時間と金に 余裕が出来たら、私は 道場に戻りたかった。
その私から 杖を取り上げたら、どんな良いことがあるのか?
杖を『物』としか 認められない人には、分かりますまいが。
道場から「師匠の寛容の精神」が 消えたことの、告知になったのであります。
不肖の弟子(私)は、(師範の精神が宿る)道場へ戻る切符(杖)を、失ったのであります。
精神安定に 効果のある 師範の杖を 手放す前に、
かわりの(安価な)杖を 買った。
新しい杖を 握っても、
最初は、何の感興も なかった。
がっかりして、何ヵ月も しまい込んでいたが、
あるとき 触れたら、師範の杖と 同じ効果があったので、
以後、毎日 触っている。
『掃除、洗濯、炊事』を きちんとやり、
『通院、服薬、断酒会出席』を 続けることで、
断酒が続けられ、アルコール依存症でも、穏やかに生きられると、彼は語ってくれた。
(酒乱時代は、男を売っていた(任侠)が、断酒を決めて以降、賭事・揉め事・借金も 避けてきたと)
お礼に 私は、昔の流行歌を うたった。
春日さんの「山の吊り橋」、藤山さんの「夢淡き東京」…
別れ際に、彼は言った。
『久々に 彼女に電話してみるか』
道化者にとっては、最高の褒め言葉だ!
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