職場の傘立てから、私の新しい傘は消えていた。
雨は止んでるから、よしとしよう。
太いビニール傘よ、さようなら。
森への坂道を、トボトボ上って行くと、
ハクセキレイの つがいが 現われた。
1羽は 歩道を歩き、
1羽は 車道へ出て行く。
優しく美しい姿。
森には、朝日が 差し込んでいた。
濡れた 玉砂利の道には、
ゲジゲジも、ミミズもいなかった。
(先週まではいた)
念のため、虫を踏まぬよう、
下を向いて 歩いていたら、
玉砂利に紛れて、小鳥がいるのに気づいた。
薄暗い中でも、美しい鳥だった。
頭は 灰色と黒で、胸は オレンジに近い茶色で、足先は 灰色。
何故、足先の色が 見えたかと云うと、
こちらに 向かって来たから。
最初に見たときは、数メートル離れた 左斜め前方にいた。
歩みを止めた私を、小鳥が見て、
少しずつ 近づいて来た。
(え? 何故?)
大きな餌に見えた?
縄張りを主張するため?
好奇心?
私の足もと、左足の10センチ前まで来て、飛び去り、
右側の森の 木の枝に止まった。
そこから また降りてきて、
こちらに向かって来る様子を見せたが、
後方から、大きな人間が歩いて来て、私を 追い越して行ったとき、
左側の森に 飛んで行ってしまった。
私は 友を選べない。
私は 来る人を選べない。
私は 去る人を追えない。
でも、
小鳥のように、のびやかに、
身体を存分に使って、心を解放することは、
実は、出来たのじゃなかろうか?
何故、許されないと 思い込んでしまったのだろう?
自分の いたらぬところや、あやまちや、罪ばかり 数えていたからか?
すっかり 重苦しくなってしまったから、
小鳥のように、飛び跳ね、うたい踊るなんて、とてもできそうにない。
でも、重いなりに 動くことはできる。
森を出ても、愛しいものに 出会えるか?
嫌いな自分を、嫌いなまま、許せるか?
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