職業訓練が 終わった。
私は、大阪の商工会議所が行う メンタルヘルス関係の検定に合格するだけで、精一杯だった。
キャリア・カウンセラー(有資格者)になる余裕(時間、頭、資金)は、とてもない。
就職活躍に励まねば。…
「キャリア」と云う言葉は、
いろいろな 使われ方をするようだ。
たとえば 官僚の世界は、学歴によって、
「キャリア」組と、
「ノン キャリア」組に、分かれているらしい。
たとえば 仕事で成功したい と思っていて、
専業主婦には、決してなりたくない婦人を、
「キャリア志向」と云ったりするらしい。
私の認識では(現時点では)、
職業「キャリア」とは、こんな感じ。
・ 働く人が、自分を肯定している状態。
・ 知識を学んだり、技術を身につけて、必要とされる現場で 役立てられること。
・ 充分に休めて、必要なだけ食べられる環境に 自分を置けることと、周囲の 人と 意志疎通できる言語能力を身につけることが、最初の目標。
・ 当人が好きだったり、得意とする分野を選べは、効率が良さそう。
・ 当人の 価値観が 活かされる分野に 焦点を絞って、一貫性をもって 経験を積めたら、良さそう。
・ 手当たり次第に、いろいろな分野に挑戦し、どれも 中途半端になった場合は、気力を失い、孤立し、貧困に陥り、早すぎる死を招くこともありうる。…
だから【職業選択を助けることが出来ます】と謳う カウンセラーは、
(キャリア・カウンセラーとか、キャリア・サポーターと、名刺に書く人は)
責任が重いと、私は思う。
職業訓練校で、
O先生や、M先生や、R先生や、T先生や、I先生が、
白板に 大きな図を描いて、
【自分の手に負えない クライアントは、リファーせよ】
【悩める人の心理状態が、治療を必要とする レベルである場合は、専門家に紹介せよ】
と、説いたのは、そのように責任重大だから だと思う。
専門家に紹介するには、
クライアントの状態を、適切に把握する必要があるだろう。
その具体的な方法については、学べなかったが、
『ゴミを 掃き出すように、自分の苦手なクライアントを 追い払っていい』とか、
『専門家に丸投げして 責任を逃れましょう』とは、
決して教わらなかった。
しかし、それに近い素人感覚のまま、
キャリア・サポーターに認定され、卒業して行った人も いたようだ。
彼は、愛嬌のある正直で能弁な人だったが、
カウンセリング・マインド(誰の話にも耳を傾ける心)を、 持たない(持つ気がない)人だった。
相手と話題を、選ぶ人だった。
彼は、卒業研究の発表の際、
『上がってしまった』と、言い出し。
『呼吸法をやってみましょう』と、切り出し、
呼吸法(誰がやっても安全な、吐いて吸う)にとどまらず、
聴き手(全員)を、『瞑想』に誘導した。
瞑想は、
本人の心の準備なく、遣らせていいものではない。
精神的な問題を、生ずる危険があるからだ。
もともと精神に問題を抱えている人に、だまし打ちのように 遣らせて良いものではない。
しかし、カウンセリング・マインドを持たない彼は、
聴衆の中に『希死念慮』を持つ者がいることを(私だ)知りながら、
暴挙に出た。
『…お母さんとヘソの緒で繋がっています…』だとか、
『…1番自分のために頑張ってくれている、自分に感謝しましょう…』だとか、
催眠誘導のようなことをされ、私は吐き気を催した。
(司会の先生は、『ヨガの先生みたいに上手』と、褒めていた)
(当人は、『いつも遣っていること』と、涼しい貌で答えた)
得意技を披露したいという人の意思を、
邪魔する気持ちは さらさらないが、
それが、私のような(心を負傷し、その傷が癒えていない)者にとって、
精神的な暴力(殆ど拷問)であることに、
彼等が【まったく】気づかなかったことが哀しい。
彼の資料は、学校で学んだこととは、ほぼ無関係だった。
マスコミで活躍している『心理屋さんの本』や、
『自己啓発セミナー』で、習得したとおぼしき 知識の集積だった。
『この学校に来て、自分は【キャリア】に向いてないと分かりました!』
『自分は、成功したいと願う人たちに、情報を発信する先生になりたい』
『合わない人が来たら、ここで出会ったカウンセリングが得意な人に、リファーします』
…傾聴せずに、リファーが出来るものならば。
…遣ってみろ。
司会の先生は、彼の時間オーバーを許した。
(本来の持ち時間は、15分)
彼が30分話したところで、休憩時間になった。
次の時間は、カウンセリングの模擬練習が予定されていたが、
先生が、彼に時間を与えたので、
彼の発表時間は、結果的に、規定の5倍以上になった。
30分だけでも、私は苦痛だったが、
司会の先生の言葉、
『彼の作った、この濃厚な資料について、一部だけでなく、時間の許す限り、聞きたいと思います。皆さんも、どうですか?』
…に、反論する気力は もうなかった。
(毒を喰らわば皿まで…と云うか、好奇心も 多少は あった)
過去の人のことで、頭をいっぱいにする暇など、私にはない。
あの人物のことは、もう思いださなくていい。
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