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2010-02-11(Thu)

電脳哀話

昔、私を採用したコンピュータ開発会社は、パソコンも マイコンも 触ったことがない(あるのは希望だけと云う)まったくの素人に、
FORTRAN(フォートラン)と云う コンピュータ言語のテキストを渡し、
1週間でマスターしてね と云い、翌週には学術計算を行う会社に 派遣した。

その会社は 某電機会社の子会社で、工場群や 子会社のビルや 大食堂などがある、街のような 敷地内にあった。
工科大学院を出た人だらけの職場、週に1日来る 綺麗なバイトのお姉さんも大学院生、上司は 日本の女が嫌いだそうで(海外で 現地の15歳の娘さんと結婚した方)、歓迎されていないのは 明白だった。
でも、頼れるのは自分だけ。がむしゃらに働くしかなかった。

肝臓を壊したけど、給料はよかった。それから数年は、スーパーコンピュータの プログラムの虫取り(不具合除去)が、私の生業だった。
人以上に大切にされるコンピュータや、風がわりな上司にも、多少の敬意は持っていた。

ある土曜日、信用金庫のATMで 給料から、5万円を引き出した。
その場で確認しなかった私が 莫迦だった。帰宅して確認したら、壱万円札4枚と 伍千円札1枚しかなかった。

信用金庫に電話し 事情を話したが、記帳された金額(5万円)と、実際に 私が受け取った分の 差額(5千円)が、埋まることはなかった。
信用金庫の人々は、自分たちの機械が 間違う筈がないと、言い張るだけだった。

悲しい思い出。

先月、PHS内のスケジュール(カレンダー)が、真っ白になっていた。
数年間の 日記がわりの記録が、すべて消えた。

パソコン整備の先生(パソコン大好きな方)が、USBメモリーを、束にして持っていたのを思い出す。
「バックアップは、1個では 心配でしょうがない。知れば知るほど、コンピュータは信用できない」と。

突然 誤動作したり、データを喪失することが、コンピュータにはあるのだ。

そのことを 理解せず、顧客を 詐欺呼ばわりした金融業者は 哀しい。

コンピュータで稼ぎ、生活基盤を作るつもりが、コンピュータから 離れたいと願うようになり、…
情報処理の現場や、恋人(コンピュータ技師)と 縁遠くなってしまったのは、…
あのATMの誤動作が、始まりだったのかもしれない。
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