半透明の ビニール袋に詰められた菜花は、へたっているようだった。
② 洗ってあった 電気釜の内釜(6合炊き用)に 水を張って、
しなびてしまった 菜花を漬けた。
入れただけでは、切り口(茎)を 上に向けて プカプカ浮いてしまうので、
1本ずつ 水に挿した。
眠かったので、手間どったが、活け花(つぼみ)が 完成したときは、達成感を覚えた。
それが、金曜日の未明。
③ 金曜日の昼、元気になった菜花を 小分けして、ビニール袋に収めて 外出した。
(友人に会うついでに、植物生態学者 宮脇 昭(みやわき あきら)氏の本に、
本物の森として 紹介されている 神社に行った。
遠いと思っていたが、往復2時間ほどで、交通費も 千円程度だった。
はじめて 森の中を 通り抜けてみた。
感覚が鈍っている 今の私には、
雨に降られた…とか、
木がたくさんあった…とか、
広かった…とか、たるんだ印象しかない。
貧すれば鈍す。…
経済(お金)の問題では なかった。
構えずにいられる人に 会う機会や、
本物の森(植物群)に 触れる機会を、
あきらめ過ぎていた。
そう云うものに、自分はそぐわないと 思い込んでいたが、
それは 間違いだった。
広大な自然の中に 身を置くことや、
気の置けない(心を偽らずにすむ)人と 過ごすことは、
望めば与えられる、生きるのに必要な 糧だった)
④ 金曜日の夜、帰宅して 内釜を片づけようとしたとき、黒い釜の底に、
菜花色の 何かを見つけた。
肥えた青虫だった。
(虫が食ってないとこを選んだよ…と言われて、菜花をもらい、完全に油断していた)
体長が、1.5cmくらいある。不気味だ。
全然 動かない。溺れて死んだ?
公園の 植え込みに 捨てに行くか?
燃えるゴミ袋に 入れるか?
どれも面倒。
楊枝に引っ掛けて、(もらったドングリを 駄目もとで蒔いてある)植木鉢に 放り込んで 終わり。
生気のない青虫は、ドングリの上に落ちた。
くの字に 折れ曲がって。
(菜花は、蒸し煮にされ、食べられた。ほろ苦かった)
⑤ 土曜日の朝、植木鉢を見ると、茶色のドングリの上に、
折れ曲がった 黄緑色の虫が 乗っている。
(昨日のまま)
⑥ 日曜日の朝、植木鉢を見ると、ドングリの上には 何もない!
ドングリの隣の 小石の陰に、奴はいた。
真っ直ぐに 伸びている。
鮮やかな黄緑では なくなっていた。
⑦ 日曜日の午後、虫は姿を消していた。
何処かで 蛹になるのだろう。
(充分 食べて、羽化の準備中だったらしい)
仮死状態で、投げ捨てられ、折れ曲がって そこにいた証拠が、
ドングリの上に 染みついてる。
Vサインのように。
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