治りそうで、完治しない。
以前から、先の平な 彫刻刀のような物を、垂直に突き立て、それを起点にした 楔(くさび)形文字のような傷…とは、思っていた。
何時、何処で、何故できたのか 分からないが、長い間 表皮が 回復しなかった。
野菜処理工場の 回転カッターで、指先を そぎ落とした時よりも、治りが遅い。
大きくはないが、不気味だ。
今年になって 治る兆しが見え、
滴形だった傷が、最近では 裂傷にしか 見えないときもある。
だけど、平刀を 突き立てたような処は、新しい皮膚を 拒んでいるみたで、
そこから また めくれるように、新しい表皮が 剥がれ落ちてしまう。
この傷は 何なのか?
2度と会いたくない、
別れて十余年も たつのに、
まだ 心から消すことが できない、…
恋した相手の 面影が宿った細胞なら、とことん剥がれて 落ちてゆけ。
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