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2009年12月1日から

半分あきらめて生きる


『週1日の日勤だけでも出てくれたら、助かる』
上司に そう言われ、
2ヵ月の期限つきで、警備会社に残った。

本当に、あの現場に残って、
『週1の日勤で済む』訳がない。

…そんなことは、頭では分かっていた。

他部隊から応援者(複数)が来ることになったが、
絶対的に人数が足りない。
特に夜勤者が。

だから、身体が壊れかけてたのに、
頭のネジも焼き切れかかっているのに、
「週1の夜勤と、週2の日勤」を申し出た。

週3日だけ?
『楽ですね』と思うかもしれないが、…

16時間拘束される夜勤は、実質2日の勤務に等しく、
他所(コールセンター)でも私は、週2日働いている。
まともな睡眠がとれる環境にもなかった。

ほとんど自殺行為。
役に立てるギリギリのところで、申告したのだが。

週1回の夜勤で済んだのは、1月中旬だけ。
笑っていたけど、疲れ果てた。

どこかで、死ねればいいと思っていたのかもしれない。
この世で休めないなら、
限界を超えれば、あの世にわたれるのじゃないか?
この世にいるから、休めないのじゃないか?

親に殺されそうになった 子どものとき、
抵抗したのが間違っていたのじゃないか?
こんなにキツイのは、そのせいか?
そんなことを考えた。

上司は、物凄い無茶なシフトで動いてた。
『俺の方が、連勤できつい』
と言われれば、もう何も言えない。

けど、
(部下を充分に休ませないで、完璧を求めていれば、何かが起きる)

(他部隊で、若い隊員が急死した)
(なぜ、秘密になった?)

(うちの部隊とくらべられ『まだましな勤務だ』と、決めつけられていたそうだ)
(気の毒なことだ、代わってやりたい)
(うらやましい)
(彼はもう、解放された。むなしい徒労から)

2月中旬、後輩と2人で、夜勤明け、
脳が殆ど仮死状態で、
始末書もののミスを起こしてしまった。

上司に、
『俺がこんなミスを起こしたことがあるか?』
『1度もない!』
と言われたときには、

(そりゃそうだろう)
(あなたは 殆ど中央統制室にいて、細かい検品作業など、滅多になさらないのだから)
(部下の報告書を、チェックするだけの立場では、ミスのしようがないわね)
と、思う私がいた。

そのミスのおかげで、私の評価は地に落ち、用無しになったらしい。
これでもう、引き留められずに済む。
3月中旬には、解放される。



※※※※※  以下は、いたく感動した、内田 樹さんの ブロブの引用  ※※※※※

【「半分あきらめて生きる」という不思議なお題を頂いた。】
【「あるがままの自己を肯定し、受け入れるためには、上手にあきらめることも必要なのでは。閉塞感漂う現代社会で どう生きていけばいいのか」という寄稿依頼の趣旨が付されていた。】

【『児童心理』という媒体からのご依頼であるから、不適切な(過大な)自己評価をしている子供たちの自己評価を 下方修正させることの効用と、そのための実践的な手順についての お訊ねなのであろうと思った。】

【なぜ私に そのような原稿発注があったかというと、ずいぶん前に 学校教育について論じた中で、】
【「教師のたいせつな仕事のひとつは 子供たちの過大な自己評価を 適正なレベルにまで下方修正することにある」と書いたことがあるからである。】

【これはたしかにほんとうの話で、「宇宙飛行士になる」とか「アイドルになる」とか「サッカー選手になる」とかいうことを「将来の夢」として 小学生が卒業文集に書く分には可憐だが、二十歳過ぎて仕事もしないで家でごろごろしている人間が語ると 少しもかわいげがない。】

【そういう人はどこかで「進路修正」のタイミングを失したのである。】
【むろん、そういう人の中にも10万人にひとりくらいの割合で、それからほんとうにNASAに就職したり、グラミー賞を受賞したり、セリエAにスカウトされたりする人も出てくることがあるので、あまり断定的には言えないが、】

【そういう「起死回生の逆転劇」を演じられるような大ぶりな若者は 年寄りの説教など端から耳を貸さないので、】
【こちらが がみがみ言ったくらいで「大輪と咲くはずだった才能が 開花せずに終わった」というような悲劇は起きないから、いささかも懸念するには及ばないのである。】
【というようなことを 書いたかに記憶している。その意見は 今も変わらない。】

【才能というのは まわりの人間が その開花を妨害しようとすればつぶせるような やわなものではない。】
【むしろ「自分をつぶしにかかっている」という現実そのものを滋養にして 開花するのである。】
【説教くさい一般論で すぐにつぶれてしまうような才能は「才能」とは呼ばれない。】

【真にイノベーティブな才能は、その人の出現によって、】
【それまで「旧いシステム」に寄食していた何千人か何万人かの面目を丸つぶれにしたり、失業に追いやってしまうものなのであるから、】
【その出現が「既得権益者」によって 妨害されて当然なのである。】
【万人が その出現を 諸手を挙げて歓迎する才能などというものは この世に存在しない。】

【かつて 白川静は 孔子を評してこう書いたことがある。
【「孔子の世系についての『史記』などにしるす物語は すべて虚構である。孔子はおそらく、名もない巫女の子として、早くに孤児となり、卑賤のうちに成長したのであろう。そしてそのことが、人間についてはじめて深い凝視を寄せた この偉大な哲人を生み出したのであろう。
思想は富貴の身分から生まれるものではない」(白川静、『孔子伝』、中公文庫、2003年、26頁)】

【思想は富貴の身分から生まれるものではないというのは 白川静が実存を賭けて書いた一行である。】
【「富貴の身分」というのはこの世の中の仕組みに スマート適応して、しかるべき権力や財貨や威信や人望を得て、】
【今あるままの世界の中で 愉快に暮らしていける「才能」のことである。】

【「富貴の人」は この世界の仕組みについて 根源的な考察をする必要を感じない(健康な人間が 自分の循環器系や 内分泌系の仕組みに 興味を持たないのと 同じである)。】
【「人間いかに生きるべきか」というような問いを 自分に向けることもない(彼ら自身がすでに成功者であるのに、どこに 自己陶冶のロールモデルを探す必要があるだろう)。】

【富貴の人は根源的になることがない。そのやり方を知らないし、その必要もない。】
【そういう人間から思想が生まれることはないと 白川静は言ったのである。】

【同じようなことを 鈴木大拙も書いていた。『日本的霊性』において、平安時代に宗教はなく、それは鎌倉時代に 人が「大地の霊」に触れたときに始まったという理説を 基礎づける中で 大拙はこう書いている。】
【「享楽主義が 現実に肯定される世界には、宗教はない。万葉時代は、まだ 幼稚な原始性のままだから、宗教は育たぬ。平安時代に入りては、日本人も いくらか考えてよさそうなものであったが、都の文化教育者は あまりに現世的であった。外からの刺激がないから、反省の機会はない。(・・・)
宗教は 現世利益の祈りからは生まれぬ」(鈴木大拙、『日本的霊性』、岩波文庫、1972年、41-42頁)】

【白川静が「思想」と呼んでいるものと、鈴木大拙が「宗教」と呼んでいるものは、呼び方は違うが 中身は変わらない。】
【世界のありようを根源的にとらえ、人間たちに生き方を指南し、さらに ひとりひとりの生きる力を賦活する、そのような言葉を語りうることである。】
【思想であれ 宗教であれ、あるいは学術であれ 芸術であれ、語るに足るものは「富貴の身分」や「享楽主義」や「現世利益」からは生まれない。二人の老賢人はそう教えている。】

【これが話の前提である。私が問題にしているのは「真の才能」である。】
【なぜ、私が「自己評価の下方修正」についての原稿をまず「真の才能とは何か?」という問いから始めたかというと、】
【「真の才能」を一方の極に措定しておかないと、「才能」についての話は始まらないからである。】

【というのは、私たちがふだん 日常生活の中でうるさく論じ、その成功や失敗について 気に病んでいるのは、はっきり言って「どうでもいい才能」のことだからである。】
【 「富貴」をもたらし、「享楽主義」や「現世利益」とも相性がよいのは「どうでもいい才能」である。】
【それは思想とも 宗教とも関係がない。そんなものは「あっても、なくても、どうでもいい」と私は思う。】

【ところが現代人は、まさにその「あっても、なくても、どうでもいい才能」の多寡をあげつらい、格付けに勤しみ、優劣勝敗巧拙をうるさく言挙げする。】

【今の世の中で「才能」と呼ばれているものは、一言で言ってしまえば「この世界のシステムを熟知し、それを巧みに活用することで 自己利益を増大させる能力」のことである。】
【「才能ある人」たちは この世の中の仕組みを理解し、その知識を利用して、「いい思い」をしている。】

【彼らは、何故この世の中は このような構造になっているのか、どのような予見によって この構造は形づくられ、どのような条件が失われたときに 瓦解するのかといったことには 知的資源を用いない。】
【この世の中の 今の仕組みが崩れるというのは、「富貴の人」にとっては「最も考えたくないこと」だからである。】

【考えたくないことは、考えない。】
【フランス革命の前の王侯たちはそうだったし、ソ連崩壊前の「ノーメンクラトゥーラ」もそうだった。】
【そして、「考えたくないことは考えない」でいるうちに、しばしば「最も考えたくないこと」が起き、】
【それについて 何の備えもしていなかった人たちは 大伽藍の瓦礫とともに、大地の裂け目に呑み込まれて行った。】

【この世のシステムは いずれ崩壊する。これは約束してもいい。】
【いつ、どういうかたちで崩壊するのかは わからない。】
【でも、必ず崩壊する。】
【歴史を振り返る限り、これに例外はない。】
【250年間続いた徳川幕府も崩壊したし、世界の五大国に列した 大日本帝国も崩壊した。】
【戦後日本の政体も いずれ崩壊する。】
【それがいつ、どういうかたちで起きるのかは 予測できないが。】

【私たちが「真の才能」を重んじるのは、】
【それだけが「そういうとき」に備えているからである。】
【「真の才能」だけが「そういうとき」に、】
【どこに踏みとどまればいいのか、何にしがみつけばいいのか、どこに向かって走ればいいのか、それを指示できる。】
【「真の才能」はつねに世界のありようを 根源的なところから とらえる訓練をしてきたからだ。】

【問題は「すべてが崩れる」ことではない。】
【すべてが崩れるように見えるカオス的状況においても、局所的には秩序が残ることである。】
【「真の才能」はそれを感知できる。】

【カオスにおいても 秩序は均質的には崩れない。】
【激しく崩れる部分と、部分的秩序が生き延びる場が 混在するのがカオスなのである。】

【どれほど世の中が崩れても、崩れずに残るものがある。】
【それなしでは 人間が集団的に生きてゆくことができない制度は どんな場合でも残るか、あるいは瓦礫の中から 真っ先に再生する。】

【どれほど悲惨な難民キャンプでも、そこに暮らす人々の争いを鎮めるための司法の場と、】
【傷つき病んだ人を受け容れるための医療の場と、】
【子供たちを成熟に導くための教育の場と、】
【死者を悼み、神の加護と慈悲を祈るための霊的な場だけは残る。】
【そこが人間性の最後の砦だからである。】
【それが失われたらもう人間は 集団的には生きてゆけない。】

【「裁き」と「癒し」と「学び」と「祈り」という根源的な仕事を担うためには 一定数の「おとな」が存在しなければならない。】
【別に成員の全員が「おとな」である必要はない。】
【せめて一割程度の人間が どれほど世の中がめちゃくちゃになっても、】
【この四つの根源的な仕事を担ってくれるならば、】
【システムが瓦解した後でも、カオスの大海に島のように浮かぶその「条理の通る場」を足がかりにして、】
【私たちはまた 新しいシステムを作り上げることができる。私はそんなふうに考えている。】

【自分の将来について考えるときに、】
【「死ぬまで、この社会は今あるような社会のままだろう」ということを不可疑の前提として、このシステムの中で「費用対効果のよい生き方」を探す子供たちと、】
【「いつか、この社会は 予測もつかないようなかたちで 破局を迎えるのではあるまいか」という漠然とした不安に囚われ、その日に備えておかなければならないと考える子供たちがいる。】

【「平時対応」の子供たちと「非常時対応」の子供たちと言い換えてもいい。】
【実は、彼らはそれぞれの「モード」に従って何かを「あきらめている」。】

【「平時対応」を選んだ子供たちは、「もしものとき」に自分が営々として築いてきたもの、地位や名誉や財貨や文化資本が「紙くず」になるリスクを負っている。】
【「非常時対応」の子供たちは、「もしものとき」に備えるために、今のシステムで人々がありがたがっている 諸々の価値の追求を断念している。】

【どのような破局的場面でも揺るがぬような 確かな思想的背骨を求めつつ 同時に「富貴」であることはできないからである。】
【人間は何かを諦めなければならない。これに例外はない。】

【自分が平時向きの人間であるか、非常時向きの人間であるかを 私たちは自己決定することができない。】
【それは生得的な「傾向」として私たちの身体に刻みつけられている。】
【それが言うところの「あるがままの自己」である。】

【だから、「あるがままの自己」を受け入れるということは、】
【「システムが順調に機能しているときは羽振りがよいが、カオスには対応できない」という 無能の様態を選ぶか、】
【「破局的状況で生き延びる力はあるが、システムが順調に機能しているときはぱっとしない」という 無能の様態を選ぶかの 二者択一をなすということである。】
【どちらかを取れば、どちらかを諦めなければならない。】

【以上は一般論である。】
【そして、より現実的な問題は編集者が示唆したとおり、今 私たちがいるのが「閉塞感漂う現代社会」の中だということである。】

【「閉塞感」というのは、システムが すでに順調に機能しなくなり始めていることの 徴候である。】
【制度が、立ち上がったときの鮮度を失い、劣化し、あちこちで崩れ始めているとき、私たちは「閉塞感」を覚える。】

【そこにはもう「生き生きとしたもの」が感じられないからだ。】
【壁の隙間から腐臭が漂い、みずみずしいエネルギーが流れているはずの器官が硬直して、もろもろの制度がすでに可塑性や流動性を失っている。】
【今の日本は そうなっている。】
【それは上から下まで みんな感じている。】
【システムの受益者たちでさえ、このシステムを延命させることに しだいに困難を覚え始めている。】

【一番スマートな人たちは、そろそろ店を畳んで、】
【溜め込んだ個人資産を無傷で持ち出して、「日本ではないところ」に逃げる用意を始めている。】
【シンガポールや香港に 租税回避したり、】
【子供たちを 中学から海外の学校に送り出す趨勢や、】
【日本語より英語ができることを ありがたがる風潮は、その「逃げ支度」のひとつの徴候である。】
【彼らはシステムが瓦解する場には居合わせたくないのである。】

【破局的な事態が訪れたあと、損壊を免れた わずかばかりの資源と 手元に残っただけの道具を使って、】
【瓦礫から「新しい社会」を再建するというような面倒な仕事を 彼らは引き受ける気がない。】

【だから、私たちがこの先頼りにできるのは、】
【今のところあまりスマートには見えないけれど、いずれ「ひどいこと」が起きたときに、】
【どこにも逃げず、ここに踏みとどまって、】
【ささやかだが、それなりに条理の通った、手触りの優しい場、】
【人間が共同的に生きることのできる場所を 手作りしてくれる人々だということになる。私はそう思っている。】
【いずれ そのような 重大な責務を担うことになる子供たちは、たぶん今の学校教育の場ではあまり「ぱっとしない」のだろうと思う。】

【「これを勉強するといいことがある」というタイプの利益誘導にさっぱり反応せず、】
【「グローバル人材育成」戦略にも乗らず、】
【「英語ができる日本人」にもなりたがる様子もなく、】
【遠い眼をして物思いに耽っている。】

【彼らはたしかに 何かを「あきらめている」のだが、】
【それは 地平線の遠くに「どんなことがあっても、あきらめてはいけないもの」を望見しているからである。たぶんそうだと思う。】


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θの夫です。
テンテコさん、こんにちわ。θの夫です。
ご報告します。θは、急性大動脈解離という心臓病で入院しました。突然背中が痛いので救急車を呼んでくれと言われ、そのまま入院です。死ななかったのは、運が良かったのと、すぐ救急車を呼んだからだと言われました。予定入院期間は1ヶ月で今、θのお見舞いに来ていて、病室からコメントしています。テンテコさんは、きつい仕事されてるみたいですが、どうかお体お気をつけて下さい。θのメールアドレス変わってませんので、良かったらメールして下さい。それではお元気で。
θの夫です。 2015/03/20(Fri)18:49:07 編集
祈っています。
θさんと、θさんの御夫君の健康、毎日祈っていたのに。……
いのちにかかわる大変な御病気で入院されたのですね。(泪)
だけど、すぐに救急車が来てくれて良かった。
御夫君が、そばにおられて、すぐ救急車を呼んでもらえて、本当に良かった。

「この者が無心に祈るならば、叶えてやろう」
そう天に思われるような、生命体でありたいです。

まいまい拝
【2015/03/23 20:31】
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